2006/12/25
考えうる最高のスタッフと技術で作品化したかった 〜 鉄コン筋クリート
ソコカラ、ナニガ、ミエル?
鉄コン筋クリートの映画を見てきました。もう絶対 DVD 買います。Blu-ray で出るならそっちも買って、そのために PLAYSTATION3 買ってもいいかというほどの勢いです。ちょっと高くなるけどいろいろ特典の付いた限定版の方を買ってもいいです。
こんな書き方すると映像の素晴らしさにばかり目が行っているように思われるかもしれませんけど、そんなことはなくて、内容が素晴らしかったので、思わずそう思ってしまったのでした。映像だけでも買う価値あると思いますが。
映画のパンフレットに、マイケル・アリアス監督が、まだこの映画の影も形も見えていなかった頃に、どういう想いで「鉄コン筋クリート」の映像化を考えていたかがわかる一節があります。
理想的な監督とクルーを結集させ、日本が誇るアニメーション技術によって、 「鉄コン」を映像作品として送り出したい。そんな作品の現場に加われるなら、 自分は何でもする。
当然その頃はマイケル・アリアスは自分が監督するとは考えてもいなかったと思いますが、結局この言葉は実現したのだと思います。
それは原作者の松本大洋が、パンフレットの冒頭に寄せたイラストとコメントでもわかるのではないでしょうか。
おめでとう、マイク
本当に素晴らしいアニメになったね.
僕もうれしいです.
観ているあいだずっと幸せでした.
一生の宝物にするよ.
大洋.
アニメの蟲師は原作をありのままに忠実に再現しているという感じで、それはそれで素晴らしいものでしたが(当ブログ「蟲師」についての過去記事)、「鉄コン筋クリート」の場合は、分解して再構築され、同じなようで違い、違うようで同じ作品に仕上がってるとでも言えば良いでしょうか。
映画を見た後に、原作を読み直したのですが、映画によって原作の世界がよりよくわかったように思いました。
映画鑑賞前には、映画上のシロとクロの顔と、原作のシロとクロはまったく同じではないので、微妙な違和感がなくもなかったのですが、実際の映画上で動き回るシロとクロははそんなことを微塵も感じさせませんでした。
ココカラ、ミンナガミエルヨ
この映画の魅力はいろいろあります。舞台となる宝町の造形だけでわくわくしてしまいます。下町の猥雑さに、ヒンドゥーのガネーシャやら、イスラムのモスクやらが渾然一体となって混じり合った街は、アジア好きな私には特にたまらない魅力を放っています。しかし、やはり主題となるシロとクロの関係性、感情、それに関わる人々と織りなされる心の綾がきちんと描ききれているからこそ、この映画が魅力あるものになっていると思います。(映像や細部の作り込みがすごいだけでは、ただのマニア受けする作品になってしまいますよね。)
作中でシロとクロと交流のあるじっちゃが語る以下のようなセリフがあります。
この子の痛みが分かるもんかね。この子の痛みは誰にも分からん。
しかし、映画も終盤に差し掛かると、この「痛み」が、しかもシロとクロの片方ではなく両方の痛みが、観客の自分にも流れ込んでくるように感じられました。書いてしまうと簡単なことですが、それを実現するのは大変なことだと思います。映像と音楽の力でそれを成し遂げたマイケル・アリアス監督および関係者の方々は本当に心から拍手を送りたいです。(こういうときに、多くの人の力で何かを作り上げることの素晴らしさを感じたりもします。)
私の文を読んでるよりとにかく観て!という感じです。DVD が発売されてから家で観るのもよいと思いますが、是非とも映画館のスクリーンで観てもらいたい映像です。
ところでこの映画は、エンディングのスタッフロールもなかなか見逃せません。声の出演のうち何人かは事前に耳にしてしまっているかもしれませんが、予備知識なしで、こんな人が出てたのかーと、楽しんでみて下さい。
なんと連載中は人気なし…
後、余談ですが「鉄コン筋クリート」は、連載中の読者アンケートでは全然人気がなかったということを、パンフレット中に寄せられたビックコミックスピリッツの副編集長・堀靖樹氏の一文で知って、少し驚きました。
読者アンケートを出す層というのは無作為抽出ではないし、偏っているような気がしなくもありません。私は平均的読者かどうかはともかく、漫画を普通よりは多く読んでいる方だと思いますが、読者アンケートは一度も出したことがありません。漫画はよく読むけど、読者アンケートは出したことないという人はたくさんいそうな気がしますが、どうなんでしょう。
Amazon で「鉄コン筋クリート」を見る
以下は、鉄コン筋クリート関連の書籍・CD のリストになります。
映画関連書籍
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注文可能になったら、メールで通知してもらうことができます。予約注文できるようになりました。 -
通常版に加えて、特典ディスク、メイキング BOOK、ディレクターズノートが付いています。
- 鉄コン筋クリート ART BOOK シロside 建築現場編
- 鉄コン筋クリート ART BOOK クロside 基礎工事編
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松本大洋とマイケル・アリアスの対談、木村真二の美術設定など盛り沢山。
アニメーションノート − アニメーションのメイキングマガジン no.04 (2007)
鉄コン筋クリートが取り上げられています。
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クロとシロ役の声優2人へのインタビュー、マイケル・アリアス監督へのインタビュー、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION )へのインタビューなどが載っています。
Invitation (インビテーション) 2007年1月号
「松本大洋ロングインタビュー − 『鉄コン筋クリート』の12年」が載っています。
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表紙が「鉄コン筋クリート」で、「特集 CUTが選ぶ日本アニメ映画ベスト30!」に取り上げられています。
映画関連 CD
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Plaid によるサウンドトラック。長編映画のサントラはこれが初めてだそう。
或る街の群青: ASIAN KUNG-FU GENERATION
ASIAN KUNG-FU GENERATION が映画のために書き下ろした主題歌。エンディングテーマに使われています。ジャケットは松本大洋が書いたそうですが。
コミックス
- 鉄コン筋クリート (1)
- 鉄コン筋クリート (2)
- 鉄コン筋クリート (3)
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単行本3冊分を1冊にまとめたもの。どちらを買うか悩ましい…。
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