2006/10/10
季節外れの西高東低の冬型気圧配置の到来で大量遭難
西高東低の冬型
この10月の体育の日の連休は、下界では比較的天気に恵まれた休暇になったのではないでしょうか。しかし、山ではそうではありませんでした。残念なことに遭難者が続出し、死者もたくさん出てしまいました。
この連休は外出していましたが、出かける前に天気予報と天気図を確認したときに、台風が変化した低気圧と大陸の高気圧のせいで、まだ10月なのに典型的な西高東低の気圧配置だなとは思っていました。(以下は7日午後3時の天気図)
「西高東低の冬型」と慣用句のように使われるこの気圧配置は典型的な冬の気圧配置です。関東平野などの太平洋側ではカラカラに乾いた晴天となる西高東低の気圧配置も、日本海側では悪天候となり、多くの山には悪天候をもたらします。
吹雪になって死者がたくさん出るとまでは思っていませんでしたが、「冬型だな…、山の天気はどうなるんだろう」とぼんやり考えていました。そうしたら、最悪の結果になり、死者がたくさん出てしまい、大変悼ましく思います。
遭難報道
信濃毎日新聞の記事を中心に挙げてみます。他にもあるかもしれません。また、記事にならない程度の小さな遭難と言える事故はたくさんあるのではと思います。亡くなった方々の直接の原因は、みな凍死のようです。
白馬岳(2パーティ7人遭難、4人死亡)
白馬岳は「はくばだけ」ではなく「しろうまだけ」と読みます。代掻き馬、代馬(しろうま)が由来という話です。東急不動産があの一帯を開発したときに、村名から駅名まで変えてしまったと聞いたことがあります。
白馬岳で遭難した福岡の2姉妹、安否なお不明 : 週間ニュース : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)(遭難現場の概念図があります)
遭難の4人死亡、3人救助 白馬岳のパーティー - 信濃毎日新聞
山岳遭難、連休中に多発 北部で荒天 県内14件、死者7人 - 中日新聞
出発1時間早ければ… 事故検証 装備の軽さ 評価は2分 / 社会 / 西日本新聞
北アルプス遭難死 秋の登山 吹雪で暗転 救助関係者 「防寒具ないかも」 / 社会 / 西日本新聞
愛した山 悲劇なぜ 白馬岳遭難死 福岡市の古賀さん姉妹 / 社会 / 西日本新聞
奥穂高岳(2パーティ6人遭難、1人死亡)
奥穂高ではもう1件、夫婦の遭難がありましたが、そちらは助かったようです。
8日未明には、北アルプス・奥穂高岳(3、190メートル)の長野県松本市側で遭難した川崎市の小学校教諭(28)と妻(30)から、無事を知らせる連絡が山小屋にあり、地元の山岳遭難防止対策協会メンバーが午前7時15分ごろ2人を救助。命に別条はないという。
前穂高岳(1人死亡)
北ア・前穂高岳で女性死亡 天候悪化でビバーク(参考ブログ記事:天候判断の誤り、装備不足 [りゅうWalker Log])
御嶽(1人死亡)
山岳遭難:御嶽山、前穂高岳で2人凍死 長野−事件:MSN毎日インタラクティブ
新潟・小蓮華山(1人死亡)
山岳遭難:30歳男性凍死 新潟・小蓮華山−事件:MSN毎日インタラクティブ
この時期の登山について
この連休は3000m級の高山では、紅葉の最後のシーズンで、それ目当ての登山客は少なくなかったと思います。ただ、山ではもう冬は足早に近づいており、多くの山小屋はこの連休で小屋閉めして、小屋の従業員は下山します。
上にも挙げた登山経験豊富な参加者「予想外の積雪が原因か」という報道がありましたが、この時期の降雪が「予想外」であるならば、登山経験豊富とは言えない気がします。9月の下旬にはもう、3000m級の高山では朝晩は氷点下に落ちて水は凍っていると思いますし、9月中の初雪が見られることも知られています。少なくとも参加者にとっては「予想外」だったかもしれませんが、経験豊富なガイドが「予想外」だとしたら、あまりにも何度も行っているために油断してしまったのでしょうか…。降雪の程度としては、可能性はあるにしても例外的にひどく、その意味では「予想以上」だったのかもしれません。
連休初日の7日から遭難が相次いだため、県警では注意を呼びかけていたようです。しかし、注意を聞いても十分な備えもなく、入山した登山者も少なくなかったようです。進む勇気より、退く勇気が大事、とはあちこちで言われていることですが、いざとなるとなかなか難しいのでしょう。
登山届を出しかけた登山客の半数ほどは登山を断念したが「天候によっては引き返す」と、予定通り出発する登山者も少なくなかった。アイゼンやテントの準備はしていないという50代の男性2人が、同隊員が止めるのも聞かずに入山していった。
山小屋泊まりの登山客なら、テントは持っていないに決まっているし、この時期に来る人の多くは夏山の延長で来ていると思われるのでまずアイゼンも持っていないでしょう。この時期の登山者にテントやアイゼンを必ず持って行けと言うだけならたやすいですが、実際には難しいと思います。ただ、今回は県警山岳警備隊員が稜線は降雪して、冬山装備が必要と注意して止めているわけですから、それで装備もなしに行くのは無謀と非難されてもしかたないでしょう。
奥穂高で遭難して仲間を失った人は救出後に「山登りをやめようと思う。ご迷惑をおかけしました」と語ったそうです(参照記事)。そんなことを言うのなら最初から登らない方がいいのでは、とも感じるのではないでしょうか。しかし、仲間を失い救出されたばかりで精神的にこたえているでしょうし、まだ点滴を受けている状態でマスコミに囲まれて記者会見を行なっている様子なので、そういうように精神的に追い込まれているような気もします。それらを考えるとその点を頭ごなしに非難するのはかわいそうと思います。
各人いろいろ思うところはあるかもしれませんがそれはひとまず置き、亡くなられた方々のご冥福をお祈り致します。
追記
遭難のあった奥穂高のすぐ近くの南岳小屋の10月8日の日記に、その時、山野上は完全に雪山であったことを示す写真がありました。またこの季節のこのような雪は決して珍しいことではなく、今までも10年に1度程度は起こっていると指摘されています。
今回のこの雪はけっして珍しいことでもなんでもない、 常にその可能性は頭にいれて10月の登山は計画すべきということです。 もし、山岳関係者で今回のこの雪を「未曾有」 「前代未聞」などという人がいるとすれば たいへん愚かなことだと思います。
今回もたまたまその大雪が3連休と重なったために各地で悲劇が起こってしまっただけ。 まあ、この大雪は予測されたものなんですけどね。
そして翌10月9日の日記で、ため息が出るほど美しい北アルプスの峰々の写真を載せてらっしゃいます。自然は容赦がなく、そして美しい…。
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