2006/09/28

岳 みんなの山

Amazon.co.jp: 岳 (1): 本: 石塚 真一 Amazon.co.jp: 岳みんなの山 2 (2): 本: 石塚 真一

割と最近、身内を山で亡くしました。

そして「」という漫画を買いました。ビックコミックオリジナルの増刊号に掲載されている作品で、最近は増刊でない方のオリジナルにも時々載っています。

長野県の遭対協(山岳遭難防止対策協会)所属の島崎三歩を主人公にした山岳救助の漫画です。厳しい山岳遭難の事故の話を、お涙ちょうだいではなく割と淡々と描いているのですが、かといって突き放しているわけではなく、暖かい眼差しを感じます。以前から注目していた作品だったのですが、先に述べたような経緯で買うに至りました。今は第1巻しか出ていないのですが、9月29日に第2巻も出ます。

作品中には亡くなった身内と同じような死に方をした人も出てきましたし、航空法上、死んでしまった人間はヘリコプターでは“物”として吊り下げて運ぶしかないこと、雪崩でまだ1人埋まっていながらも、先に助けた1人を救うために現場を去らなければいけない場面等、読んでいると山岳遭難の冷徹な現実に切なくなる箇所も時々出てくるのですが、それでも人が山に登る「何か」をこの漫画はうまく描いていると思います。

1巻の第5話(第5歩)に三歩のこんなセリフがあります。

ある朝、窓から見える浅間山は活火山で火口には近づけないことを思い出したんだ。

オレは煙の出てるところが見たくて生まれて初めて山に登った。

けれど頂上についた時、火口のことなんてどうでも良くなっちゃって、ただただ思ったんだ。

みんな来ればいいのにって…………

ところで、どの分野でも言えることだと思うのですが、自分の関わっている分野の漫画やドラマ、映画などを見ると、細部のいい加減な描写が気になってしまい、興醒めしてしまうことはあると思います。山岳・クライミングものもひどいものが少なくありません。クリフハンガーなんて突っ込みどころが多すぎて笑っちゃいますし、今モーニングに連載中の堀内夏子のイカロスの山もちょっとあれれ?というところがあります。(イカロスの山のあれれについては、クライミング・ブック・ニュースさんが参考になると思います。)

しかし、この「岳」はそのようなことはなく、きちんと描かれています。他にも同ジャンルできちんと描かれているものを挙げると、夢枕獏の「神々の山嶺」を原作として谷口ジローが漫画化したものや、「夏子の酒」等で有名な尾瀬あきらの「オンサイト!があります。(「オンサイト!」はフリークライミングを題材としていたのですが、第1部完という形で打ち切られているのが残念です。クライミングのことを丁寧に描いていましたが、一般の人にはあまりおもしろくなかったのでしょうね。)

余談ですが「神々の山嶺」は最初に出た単行本と、後の文庫版でラストの部分が微妙に変更してあるそうです。というのも、単行本が出てから文庫本が出るまでの間にこの小説の題材ともなっているマロリーの遺体が本当に発見されたからです。

「神々の山嶺」自体はものすごくおもしろいです。夢枕獏はダテに全部、吐き出したと言ってるわけではありません。その年に読んだ本の中で一番おもしろかったです。思わず徹夜して読んでしまいました。別に山登りをやっていない人でも引き込まれる話だと思います(実際、私の周囲ではそんな声が)。

遺体発見を巡る実際の話に興味のある方は、「そして謎は残った−伝説の登山家マロリー発見記を読んでみて下さい。

追伸:無念でなかったとは言えないと思うけど、こちらは大丈夫だから安心して休んで下さい。

Amazon.co.jp: 神々の山嶺〈上〉: 本: 夢枕 獏 Amazon.co.jp: 神々の山嶺〈下〉: 本: 夢枕 獏 Amazon.co.jp: 神々の山嶺(いただき) (1): 本: 夢枕 獏,谷口 ジロー そして謎は残った−伝説の登山家マロリー発見記

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6 Comments

Re: 岳 みんなの山

自分では山のことは、ぜんぜん分かりませんが、ここに挙げられているのはだいたい読んでますねえ。谷口ジローは、他の山モノもカッコいいッス。

From : mojo @ 2006-09-29 02:09:32 編集

Re: 岳 みんなの山

谷口ジローの作品はいくつか読んでいるのですが、他にも山モノがあったんですね。知りませんでした。タイトルを覚えているのはありますか?作品数が多いので、教えてもらえると助かります。 (Wink)

From : Hiro @ 2006-09-29 03:14:56 編集

Re: 岳 みんなの山

原作付きですけど「K」っていうのがありましたね。今、売ってるかどうか分からないですけど、→これです。http://ja.wikipedia.org/wiki/K_%28%E6%BC%AB%E7%94%BB%29

あと山岳モノとは方向が違いますが、いくつかの短編で山や山で生きるものを描いていますね。鷹匠の話や熊が出てくる短編とか、独特の描き方をしていて面白いです。

From : mojo @ 2006-09-29 19:39:52 編集

Re: 岳 みんなの山

ありがとうございました。

「K」は Amazon で見てみたら、中古で結構いい値段ついてますね。いい作品なんでしょう。どっかで安く手に入らないかな。探してみます。

Amazon.co.jp : K

From : Hiro @ 2006-09-30 01:52:49 編集

Re: 岳 みんなの山

「岳」は雑誌に載っていると、結構読んでいます。三歩が超人的に山を駆け回ることを除けば、淡々と現実に近い様子を描いていることが伝わってくるマンガですね。確かに内容によっては切ないものもあり、立ち読みをしながら(オイオイ)目がウルウルしてくることがあります。そのうち、単行本も買ってこなければ・・・。

「オンサイト!」は連載開始時に一回見ただけですが、ずいぶんマニアックな分野を取り上げたなぁというのが正直な印象でした。やはり、一般受けしなかったのですね。

最近は、ストーリーの展開や、話の背景などがしっかり考えられているマンガがすくなっているような気がして残念です。もちろん、その中にもいいものはありますが、気がつくと、いつも同じような漫画家の名前しか目にしませんねぇ。

From : Ken @ 2006-10-01 01:34:13 編集

Re: 岳 みんなの山

三歩が超人的に山を駆け回ることを除けば

確かに。人を背負ったまま登攀するのなんて、私にはとてもとても…。

ストーリーの展開や、話の背景などがしっかり考えられているマンガがすくなっている

そんな気もしますが、テレビドラマはさらにひどくて、近頃は漫画が原作のものがやたらと多い気がします。まともな脚本家が減っているのでしょうかね。

From : Hiro @ 2006-10-01 16:00:12 編集

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