2007/05/15

日経新聞が医学的根拠のないセルライトを紹介

もはや新聞社にリテラシーなんて期待してないが

5月12日の「NIKKEI プラス1」の記事に『「セルライト」ができたら』という痛い記事が載っていました。日経BPが出している「リアルシンプルジャパン」編集部による「くらし知っ得」というコラムです。日経本誌による記事ではないとはいえ内容のチェックは入るでしょうから、この程度の真偽も判断できないか、多少怪しくともお金になるから載せたのでしょうね。

ネットのない時代には検証することができなかったような新聞記事やその他マスメディアの報道内容も、ちょっとの知恵や好奇心があれば、誰もが調べることができるようになったというのは、おもしろいことです。

セルライトとは

件の『「セルライト」ができたら』という記事にはセルライトについて、衣理クリニック表参道院長、片桐衣理という人に聞いたという説明しています。

セルライトとは皮下組織の血行が悪くなった結果、脂肪細胞が老廃物をため込んで大きく成長したもの。触れると他の場所より冷たいのが特徴だ。 一度できてしまうと、ダイエットなどで減らすことは難しく頑固に存在し続ける。

Wikipedia のセルライトの項によると、フランス生まれの言葉で、1960年代末から広まったとあります。

『Cellule(細胞)+ ite(鉱物)』の造語としてフランスで生まれ、1960年末ごろからマスコミに現れるようになった。

ダイエット・スキンケアFAQ「セルライトの正体」というページには、1900年代初頭からあった言葉で、その後 1973年にベストセラーになった本で広まったようなことが書かれています。

セルライトという言葉が使われ始めたのは1900年代の初頭、ヨーロッパのエステティックサロンが女性の太ももやお尻のボコボコした脂肪をこう呼んだことが始まりです。

1973年、ニューヨークのエステティックサロンの経営者である二コール・ロンサードがセルライトについての本を書きベストセラーになりました。その本によるとセルライトとは肝臓や腎臓、腸などから排出された老廃物と水分が皮膚の表面下にある脂肪細胞と結合し、「オレンジピール」と称されるゲル状の物質(セルライト)に膨れ上がると書かれてあります。

日本にセルライトという言葉が上陸したのは、やせるドットコム「セルライトとは何か?」によると、部分痩せできるとして有名になった「スヴェルト」の宣伝用語としてらしいです。

日経産業新聞に「セルライト」とう言葉が紹介されたのは1996年、今から9年前である。日経優秀製品として「ズヴェルト」という商品が最優秀賞を受賞したニュースが初めての紹介である。この化粧品ももちろんデブと戦争の国アメリカからの輸入品である。この化粧品は、「マッサージが不要」というのがキャッチフレーズであったようだ。(1996年2月7日 日経産業新聞)

日本での一般化したのは、捏造問題でつぶれた「あるある大事典」のセルライト関連の番組の影響も大きいと思います。

以上、セルライトという言葉の由来について当たってみましたが、さほど興味がないので詳しくは調べてません。参考程度に

セルライトはマーケティング用語

いずれにせよ、ちょっと調べれば、否、調べなくても考えれば怪しいと感じるかもしれませんが、セルライトは医学的根拠のある言葉ではなくて、マーケティング用語に過ぎません。マーケティング用語、つまり、物やサービスを売るために作られた言葉ということです。

マーケティング用語と言えば、さしたる科学根拠のない「マイナスイオン」、雑誌ソトコト関係者が商標登録していた「ロハス (LOHAS)」なんかを思い出します。本題からそれますので、興味のある方は検索してみて下さい。

セルライトなんてものは存在しない

あちこちに根拠がない言葉だと言う情報が書かれていますが、いくつか取り上げてみましょう。

まずは、ウィキペディアから。

健康食品やエステの世界では、セルライトを肌のでこぼこを作る原因物質として取り扱うことが多いが、医学的根拠はない。

医学的には、セルライトが原因とされる肌のでこぼこは、皮下脂肪が大量にたまった状態に過ぎない。セルライトは医学的用語とは認められていない。

次に先ほどもちょっと紹介したダイエット・スキンケアFAQ「セルライトの正体」

セルライトという言葉は医学用語にはありません。しかし、セルライトは普通の脂肪とは違うので特別なお手入れが必要であるという理論を作らなければならない人達がいました。エステティックサロンの経営者やそれらに関連した商品を作っている化粧品会社の人たちです。

しかし、肝臓や腎臓などから排出された老廃物が脂肪細胞と結合するという医学的根拠は全くありません。そのような老廃物が体にたまっているのに治療しないとすれば、重い病気にかかり死んでしまうでしょう。

さらに、研究でもセルライトは特別な脂肪ではないということが確認されています。太ももなどセルライトが発生するとされる部分の脂肪とその他の場所の脂肪では生化学構造の違いはありません。セルライトと呼ぼうが呼ぶまいが、それはただの古い脂肪です。

あるある掲示板」には、こんなコメントもありました。

ちなみに私、医者やっているんですけれど、セルライトなんて見たことないんです。

循環傷害を起こしている組織が壊死しない理由も教えてください。

循環傷害があれば酸欠になりますから、脂肪が溜まるのではなくて組織が壊死するはずです。

SAFETY JAPAN の『また「あるある大事典」にダマされた。』の書評にも。SAFETY JAPAN は、同じ日経BPだというところが皮肉でしょうか。

 「肥満には体内の脂肪球に古い脂肪分がたまって固まったセルライトが関係する」という俗説がある。「あるある」もまた、それに乗って「肥満の原因であるセルライトをなくすにはマッサージで脂肪球から古い脂肪を押し出すと良い」と放送した。

 ところが、実際には古い脂肪がたまったセルライトなどというものは存在しない。そもそも、人間の細胞はマッサージ程度で中から脂肪が出てくるようにはできていない。

 「もし外から腕を軽くつまんだぐらいで細胞の中の成分が出てくるとしたら、体重がもろにかかっている脚の細胞などからは、次々と細胞内の成分がしみ出してくることでしょう。そんなことになったら、人間は動き回るどころか、自重を支えることさえ不可能になってしまいます。」

Amazon.co.jp: また、「あるある」にダマされた。: 本: 鷺 一雄

でこぼこしている脂肪はもちろんありますが、それは名前を付けて他の脂肪と区別するようなものではないし、セルライトは冷たいというのも、単に脂肪の部分は元々血行も少ないし、筋肉に比べ熱を生産していないからであって、脂肪一般の話ですね。

というわけで、いんちき臭い話がまかり通っているわけです。セルライトもマイナスイオンや波動などとともに似非科学用語とみなして良いでしょう。出てきた瞬間に怪しいと思って疑ってかかる必要のある類いの言葉です。

 ついでにロハスとマイナスイオン関連リンク

上で「興味のある方は検索してみて下さい」と書きましたが、今回の記事を書くに当たって参考にしたサイトをついでに紹介しておきます。

こんな記事書くと、まったく逆の意図の広告が表示されてしまうんだろうなぁ。

ポスト @ 2:12:40 | | 「このエントリーを含むはてなブックマーク」ボタン この記事「日経新聞が医学的根拠のないセルライトを紹介」を含むはてなブックマークの数

Comment

No Comments

Post Your Comment



(Smile) (Wink) (Laugh) (Foot in mouth) (Frown) (Gasp) (Cool) (Tongue)

*は入力必須です。E-Mailは公開されません。